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コンサルタント コラム

主任コンサルタント 柏原 吉晴

 

今回は、ISO9001:2015の「7.1資源」について解説します。

これは旧版(2008年版)の「6.資源の運用管理」に該当します。

経営資源の管理は経営上の最重要課題の一つですが、これまでのISO運用において
どれだけ重要視してきたでしょうか?組織の事業プロセスへの品質マネジメント
システム要求事項の統合を確実にすること(5.1.1c参照)が求められる今回の
2015年版において、今一度、経営資源について考えてみたいと思います。

要求事項は、「7.1.1一般」から「7.1.6組織の知識」までございますが、今回は
「7.1.4プロセスの運用に関する環境」までを解説します。

要求事項は以下の通りです。

――――――――――――――――――――――――――――――――
7.1.1 一般

組織は、品質マネジメントシステムの確立、実施、維持及び継続的改善に必要な
資源を明確にし、提供しなければならない。

組織は、次の事項を考慮しなければならない。

a)既存の内部資源の実現能力及び制約

b)外部提供者から取得する必要があるもの

7.1.2 人々

組織は、品質マネジメントシステムの効果的な実施、並びにそのプロセスの運用及び
管理のために必要な人々を明確にし、提供しなければならない。

7.1.3 インフラストラクチャ

組織は、プロセスの運用に必要なインフラストラクチャ、並びに製品及びサービスの
適合を達成するために必要なインフラストラクチャを明確にし、提供し、維持しなければならない。

注記 インフラストラクチャには、次の事項が含まれ得る。

a)建物及び関連するユーティリティ

b)設備。これにはハードウエア及びソフトウエアを含む。

c)輸送のための資源

d)情報通信技術

7.1.4 プロセスの運用に関する環境

組織は、プロセスの運用に必要な環境、並びに製品及びサービスの適合を達成する
ために必要な環境を明確にし、提供し、維持しなければならない。

注記 適切な環境は、次のような人的及び物理的要因の組合せであり得る。

a)社会的要因(例えば、非差別的、平穏、非対立的)

b)心理的要因(例えば、ストレス軽減、燃え尽き症候群防止、心のケア)

c)物理的要因(例えば、気温、熱、湿度、光、気流、衛生状態、騒音)

これらの要因は、提供する製品及びサービスによって、大いに異なり得る。

――――――――――――――――――――――――――――――――

書かれているのは、ヒト(=7.1.2人々)とモノ(7.1.3インフラストラクチャ)に
加えて、環境(7.1.4プロセスの運用に関する環境)についてです。情報という経営
資源は、この後の「7.1.6組織の知識」と重なります。これについては後日解説します。

まず、「7.1.1一般」ですが、ここでは内部資源と外部資源を考慮することを求めて
います。経営資源を考える時、自社内部の埋もれている資源、外部環境において気付
いていない資源は、何かしら必ずあるものです。当たり前のことですが大事なことです。

次に「7.1.2人々」ですが、旧規格では、いきなり力量と教育訓練のことが規定されて
いましたが、今回の改訂で、そもそも論として、当社にとって必要な人材の明確化を
求めています。具体的な文書や記録が必要という要求事項ではありませんが、内部人材
の力量を鑑みて、採用や外部人材の登用の必要性などをよく考慮し、各プロセスの適正
人員を明確にする意図があります。

人件費コストを抑制したいというのは、どの組織のトップも考えることです。現状が
適正なのか、それを数値ではっきり示し、生産性向上のために量と質のバランスを
説明できるようになりましょう。食品会社では、朝、下痢でもしていれば出勤停止
の企業がほとんどです。ギリギリの人員で業務を遂行している中で、シフトに急に
穴があくことは、納期や残業代などに影響を及ぼします。生産調整、シフト管理、
ヘルプ体制の構築など、組織の「人々」に求められる要求事項は、ISO9001に規定
されていない高度なマネジメントが求められるでしょう。FSSC22000やISO22000では、
「必要な人々の明確化」の要求事項は無いので、ISO9001をやっている食品会社は、
上記のような視点で内部監査されてはどうでしょうか?

「7.1.3インフラストラクチャ」については、旧版と変わりありません。インフラの
保全計画、投資計画を作り、資源管理してほしいと思います。インフラ資源の管理
については、FSSC22000(ISO/TS22002)の方がより細かい要求があるので、ISO9001
取得の食品会社は、むしろISO/TS22002規格を参考に、「7.1.3インフラストラクチャ」
を構築した方が良いでしょう。逆に、ISO9001を持っていなくFSSC22000やISO22000だけ
を取得されている食品会社は、「d)情報通信技術」の管理が十分ではないので、情報
セキュリティの観点からもインフラ管理した方が良いです。

最後に、「7.1.4プロセスの運用に関する環境」ですが、これは旧版の「作業環境」
と同じですが、注記の記述が増えました。「c)物理的要因」は旧版と同じ管理で良いです。

以前のメルマガでも書きましたが、労働安全衛生法上の管理を当てはめれば、
「b)心理的要因」は大体カバーできます。従業員のストレスチェックが義務化
された中で、従業員の身体面、メンタル面のケアは重要な資源管理の一つです。

「a)社会的要因」は、ダイバーシティ経営を目指しましょう。ダイバーシティ経営
とは、経産省の定義では「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会
を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」の
ことで、冒頭の「多様な人材」とは、性別、年齢、人種や国籍、障がいの有無、
性的指向、宗教・信条、価値観、キャリアや経験、働き方など、多様な人材を指します。
特にグローバル化を目指す企業であれば、「ダイバーシティ経営企業100選」
に表彰されることを、品質目標にしても面白いかもしれません。
平成27年度からは、「新・ダイバーシティ経営企業100選」を募集しています。

ダイバーシティの推進は、企業の競争力を高めていくために、必要かつ有効な戦略の一つと思います。

柏原 吉晴(かしわばら よしはる)

Yoshiharu Kashiwabara

TBCSグループ、株式会社フィールズコンサルティング 取締役
(ISO / FSSC / 経営支援のコンサルティング実績 300社以上)
東京農工大学大学院、ビジネス・ブレークスルー大学大学院修了(農学修士、MBA)
QMS及びFSMS審査員研修修了

大学院修了後、ホテル・旅館向けの経営及び衛生コンサルティングを行う組織で、 全国40社以上のホテル・旅館の人件費削減、HACCP厨房設計、システム運営指導、ISO認証支援を行い、また、全国50社以上の食品衛生指導、浴場衛生指導を定期的に行ってきた。
2008年からは、株式会社TBCソリューションズで、QMS、EMS、及びFSMSなどの認証取得や運営のコンサルティング、内部監査員養成研修講師、及び経営コンサルティングを担当した。
2018年10月からは、TBCソリューションズから分社化し、食品専門のコンサルティングファームとして、株式会社フィールズコンサルティングを設立、取締役に就任し、 FSMSを中心に、食品会社向けの総合的なコンサルティングを提供している。また、全国各地での講演や、執筆活動も行っている。

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