主任コンサルタント 柏原 吉晴
今回は、ISO9001「8.3.4 設計・開発の管理」について解説します。
FSMS(ISO22000/FSSC22000)では、7.4全体及び8.2が該当します。
FSMSでは食品安全に注力していますが、食品会社としては、品質向上も意図する成果
として認識していると思います。
よって、ISO9001の「8.3.4」を活用した製品品質、およびプロセスの質の向上も意図した
設計開発をお勧めします。
まず、8.3.4の要求事項は、次の通りです。
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組織は、次の事項を確実にするために、設計・開発プロセスを管理しなければならない。
a)達成すべき結果を定める。
b)設計・開発の結果の、要求事項を満たす能力を評価するために、
レビューを行う。
c)設計・開発からのアウトプットが、インプットの要求事項を満たすこと
を確実にするために、検証活動を行う。
d)結果として得られる製品及びサービスが、指定された用途又は意図され
た用途に応じた要求事項を満たすことを確実にするために、妥当性確認活動を行う。
e)レビュー、又は検証及び妥当性確認の活動中に明確になった問題に対して必要な処置をとる。
f)これらの活動についての文書化した情報を保持する。
注記
設計・開発のレビュー、検証及び妥当性確認は、異なる目的をもつ。
これらは、組織の製品及びサービスに応じた適切な形で、個別に又は組み合わせて行うことができる。
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まず、a)の達成すべき結果は定まっていますか?
各設計開発工程には、それぞれ異なる目的(達成すべき結果)があります。
食品安全面から言うと、ハザードの明確化、許容水準の決定、ハザード評価、管理
手段の選択、組み合わせの決定(OPRPとHACCPプランの決定)などが、達成すべき
結果と言えますが、設計開発工程上は食品安全だけではなく、品質面も重要な達成
すべき結果であり、当然ながら≪売れる≫製品を設計開発しなければなりません。
また、製造コスト(材料、部品、使用エネルギーなど)も工程設計上、重要な達成べき結果と言えます。
b)の設計・開発の結果のレビューは、a)の結果と実際のアウトプットを評価することです。
十分なアウトプットがされていなければ、再設計することになります。
例えば、ハザードを明確にする工程で、生物的・化学的・物理的なハザードが漏れなく
抽出できているかを、レビューすることになります。
c)の検証は、各設計開発工程からのアウトプットが、インプット要求事項を満たすこと
を、客観的証拠から確認することです。
例えば、インプットした生物的ハザードの食中毒菌が、アウトプットされたHACCPプラン
で管理することで、確実に殺菌できているという証拠を、製品の細菌検査等で確認するこ
とです。品質面で言えば、例えば、インプットした原価率が、アウトプットされたレシピ
に沿って調合することで、確実に意図した原価率以上で製造できるという証拠を、試算など
で確認することです。
d)の妥当性確認は、インプットされた意図した用途を、客観的証拠から確認することです。
例えば、検証済みの各工程を経て、結果的に出来あがった製品が、その許容水準(製品規格)
を満たすことを、各種検査などで確認することです。品質面で言えば、先程の事例で言えば、
実際に試作してみて、投入原材料と生産された製品から原価率を算出し、実際の加工環境にお
いて、意図した成果である原価率を満たしているか確認することです。
e)は、当然ながらレビュー、検証、及び妥当性確認の活動中に明確になった問題に対して、
必要な修正・是正処置を取ることになります。
f)は、これら一連の活動について、今後の設計開発のためにも、必要な情報は文書化して記録
しておくという意図があります。
以上が、ISO9001:2015が求める設計・開発の管理ですが、私が述べた事例に限定されず、食品
会社としては、品質面も含めた管理の方が、より現実的であり、食品安全は当然ながら、より
売れて、よりコストを抑制できる製品設計となるでしょう。