主任コンサルタント 柏原 吉晴
今回は、ISO9001「8.4外部から提供されるプロセス、製品及びサービスの管理」について解説します。
この8.4は、サプライヤー管理を求めており、外部提供の原料や資材の管理、委託業務先
の管理に該当します。
FSMS(ISO22000/FSSC22000)では、外部委託管理に関しては「ISO22000の4.1」、
供給者および契約者との食品安全に関する情報共有の効果的な手続きとしては
「ISO22000の5.6.1のa)」、及び供給者の選定及び管理に関しては「ISO/TS22002-1の9.2」
に該当します。
更に、これらの管理の結果は、「ISO22000の7.3.3.1」の原料、材料、及び製品に
接触する材料についての記述文書が存在します。
FSMSでもISO9001が求める要素はありますが、ISO9001だけの特徴的な要求事項があります。
是非、ISO9001の「8.4」を活用したマネジメントに取り組んでみてください。
まず、ISO9001の8.4の要求事項(一部を抜粋)は、次の通りです。
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8.4.2 管理の方式及び程度
組織は、外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、顧客に一貫して適合
した製品及びサービスを引き渡す組織の能力に悪影響を及ぼさないことを確実にし
なければならない。
(中略)
c)次の事項を考慮に入れる。
1)外部から提供されるプロセス、製品及びサービスが、顧客要求事項及び適用さ
れる法令・規制要求事項を一貫して満たす組織の能力に与える潜在的な影響
2)外部提供者によって適用される管理の有効性
8.4.3 外部提供者に対する情報
組織は、外部提供者に伝達する前に、要求事項が妥当であることを確実にしなければならない。
(中略)
b)次の事項についての承認
1)製品及びサービス
2)方法、プロセス及び設備
3)製品及びサービスのリリース
c)人々の力量。これには必要な適格性を含む。
d)組織と外部提供者との相互作用
・・・
―――――――――――――――――――――――――――
まず、8.4.2は、「組織の能力に悪影響を及ぼす」がキーワードです。
当社のマネジメントシステムに悪影響を与える外部提供者がもたらすリスクを洗い
出して管理せよ、ということです。
更に、8.4.3では、外部提供者の「手順」や「使用設備」や「作業者の力量」や「組織
との相互作用」についても、外部提供者への伝達を要求しています。
FSMSでは明確には要求していませんが、リスク評価に基づき、サプライヤー管理として
要求すべきことを要求していきましょう。
ここで重要なのは、経営に役に立たないサプライヤー管理をだらだらとすることではなく、
自社の経営戦略からサプライヤー管理の在り方を、定期的に見直すことだと考えます。
自社の経営戦略とサプライヤー(外部提供者)の関係性は、例えば、
1.海外販路拡大、売上拡大 → 海外での調達が可能か?
2.新商品開発の推進 → 新商品の原材料について調達可能か?
3.現状のコストを大幅削減 → 価格低下が可能か?体力はあるか?
などとなり、経営戦略に沿ったサプライヤーの選択と集中が必要となります。
また、この前提として3C分析(市場・顧客/競合/自社)を行うことも重要です。
市場・顧客分析から、新商品開発や、コスト低減などの必要性が挙げられるのであれば、
当社にない強みを持った新規委託先の開拓や、コスト低減依頼などが必要になります。
競合分析から、競合の強みとして生産拠点が多いことが挙げられるのであれば、戦略に
沿った生産拠点として、新たな生産委託先の選択が必要になります。
自社分析から、ボトルネックとなるサプライチェーンがあれば、その調達先の経営
能力(マネジメント能力)が重要となり、企業統治や財務状況(信用調査)などの
評価係数が重くなります。
形式的なサプライヤー管理は、自社にとって負担でしかありません。
ISOやFSSCの審査だけを考えれば、ほとんどの組織の仕組みは十分に機能し、要求
事項を満たしていますが、本質的なマネジメントを考えると、十分ではないとも思えます。
組織の戦略を受けて、既存のサプライヤー管理の仕組みを、シンプル、且つ、フレキシブル
に変えていくことを望みます。