主任コンサルタント 柏原 吉晴
<ISO22000:2018年版解説(28)>
テーマ:経営に貢献するISO22000:2018
TBCSグループの食品会社向け専門コンサルティング組織である株式会社フィールズコンサルティングの柏原吉晴が担当します。
今回も、「8.5.1 ハザード分析を可能にする予備段階」について解説します。
本日はその中の最後「8.5.1.5 フローダイアグラム及び工程の記述」について解説します。
この要求事項は、この後のハザード分析のハザードの明確化において、明確化する単位となる各工程を明確にし、現状の管理手段、パラメータを記載し、ハザード制御が十分かどうかの情報を提供します。
要求事項は以下の通りです。
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8.5.1.5.1 フローダイアグラムの作成
食品安全チームは、FSMSが対象とする製品又は製品カテゴリー及び工程に対する文書化した情報として、フローダイアグラムを確立、維持及び更新しなければならない。
フローダイアグラムは工程の図解を示す。
フローダイアグラムは、食品安全ハザードの発生、増大、減少又は混入の可能性を評価する基礎として、ハザード分析を行う場合に使用しなければならない。
フローダイアグラムは、ハザード分析を実施するために必要な範囲内で、明確で、正確で、十分に詳しいものでなければならない。フローダイアグラムには、必要に応じて、次の事項を含めなければならない:
a) 作業における段階の順序及び相互関係;
b) あらゆる外部委託した工程;
c) 原料、材料、加工助剤、包装材料、ユーティリティ及び中間製品がフローに入る箇所;
d) 再加工及び再利用が行われる箇所;
e) 最終製品、中間製品、副産物及び廃棄物を搬出又は取り除く箇所。
8.5.1.5.2 フローダイアグラムの現場確認
食品安全チームは、現場確認によって、フローダイアグラムの正確さを検証し、必要に応じて更新し、文書化した情報として保持しなければならない。
8.5.1.5.3 工程及び工程の環境の記述
食品安全チームは、ハザード分析を行うために必要な範囲内で、次の事項を記述しなければならない:
a) 食品及び非食品取扱い区域を含む構内の配置;
b) 加工機器及び食品に接触する材料、加工助剤及び材料のフロー;
c) 既存のPRPs、工程のパラメータ、(もしある場合は)管理手段及び/又は適用の厳しさ、若しくは食品安全に影響を与え得る手順;
d) 管理手段の選択及び厳しさに影響を与える可能性のある外部要求事項(例えば、法令及び規制当局又は顧客から)。
予想される季節的変化又はシフトパターンから生じる変動は、必要に応じて、含めなければならない。
記述は必要に応じて更新し、文書化した情報として維持しなければならない。
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ハザード分析をする上で、フローダイアグラムの正確さは重要です。
各工程が明確だからこそ、その工程に潜む食品安全ハザードが見えてきます。
一方この要求事項は、「必要な範囲内」で記述し、「必要に応じて」含めれば良いのでどこまで明確で、正確で、十分に詳しいフローダイアグラムかは、外部審査員や監査員が
決めることではなく、あくまでも自社にとって必要な範囲で決めて、記述をして下さい。
費やす時間・人件費と効果のバランスを考えて、構築・運用を進めて頂きたいものです。
なお、作成・更新したフローダイアグラムは、現場確認が必要であり、その結果は記録として維持して下さい。
また、年間を通じて人件費波動の激しい組織の場合、ピークを迎える時期に決まってミスは起こるものと認識し、予めハザード分析を行い、リスク低減を図りましょう。
国や地域のイベントや、自社の宣伝効果によって、生産計画を大きく上回る注文が来る可能性もあります。そのような時の備えとなります。
次回からは、「8.5.2 ハザード分析」を解説します。