主任コンサルタント 柏原 吉晴
前回は、ISO/FDIS 9001:2015「4.1組織及びその状況の理解」について述べましたが、
今回は、「4.2利害関係者のニーズ及び期待の理解」です。
4.2利害関係者のニーズ及び期待の理解では、
次の事項は、顧客要求事項及び適用される法令・規制要求事項を満たした製品及び
サービスを一貫して提供する組織の能力に影響又は潜在的影響を与えるため、組織
は、これらを明確にしなければならない。
a)品質マネジメントシステムに密接に関連する利害関係者
b)品質マネジメントシステムに密接に関連するそれらの利害関係者の
要求事項
組織は、これらの利害関係者及びその関連する要求事項に関する情報を監視し、
レビューしなければならない。
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と書かれています。
求めているのは、利害関係者と、その利害関係者の要求事項を明確にし、これを監視、
レビューすることです。ここで利害関係者とは、顧客、消費者、オーナー、親会社、
株主、従業員、供給者、銀行、組合、提携先企業、競合先、市民団体、地方公共団体、
政府、圧力団体など様々あり、且つ、これらに限定されません。
組織にとって「密接に関連する」と思われる利害関係者を特定すればよいです。
密接に関連すると言われても、なかなか想像できないかもしれません。基本は顧客です。
要求事項上は、「製品及びサービスを一貫して提供する組織の能力に影響又は潜在的
影響を与える」と言っているので、自社製品及びサービスの売上にとって、影響のある
顧客、ターゲットとしている顧客を意識すれば良いです。
「潜在的影響」とは、今は顧客ではなくても、将来の顧客として意識しているなら入れた
方が良いでしょう。
組織は、顧客だけではなく、従業員や供給者や株主など様々な利害関係者によって
支えられています。
それら利害関係者を明確にし、彼らの思っていること、ニーズ、期待というものを
マーケティングして、市場の心をしっかりつかみましょうと言っているだけで、
大企業であればマーケティング部署があり、当たり前に行っていることかもしれま
せんが、多くの中小零細企業は、営業担当がその一部を兼務しているとか、社長自身
が一番マーケティング業務に従事しているという状況かもしれません。
誰がやるにしても、マネジメントシステムとして、その当たり前を求めているのでしょう。
利害関係者のニーズや期待についての情報は、監視され、組織によってレビューされ
なければなりません。
監視方法の一つは、相互コミュニケーションを通して行います。
関連する要求事項として、「7.4コミュニケーション」、「8.2.1顧客とのコミュニ
ケーション」、及び「8.4.3外部提供者に対する情報」があります。
コミュニケーションだけに頼らずとも、ビックデータを生かした様々なサイバー
マーケティングが可能な時代です。マーケットニーズは常に変化しますので、適切な
監視手段の構築が望まれます。
食品メーカーであれば、ターゲットは一般消費者でしょう。1
次加工であっても、直接の顧客の、その先にいるのは一般消費者ですので、顧客及び
消費者のニーズと期待に応えなければ、継続的な事業の発展は望めません。
ISO22000やFSSC22000では、ISO/FDIS 9001:2015の利害関係者という広い視点では要求さ
れていません。顧客要求事項と法令規制要求事項をハザード分析にインプットするにとど
まっています。ISO9001をやっている食品会社は、この改訂を機に、事業継続の視点で、
密接に関連する利害関係者とそのニーズと期待を明確にし、ハザード分析することで、
より堅牢なマネジメントシステムが構築されるのではないでしょうか。
ニーズや期待の多くは品質面かもしれませんが、以前のメルマガでも書いた通り、品質
ハザードを意識したFSMSが理想です。