主任コンサルタント 柏原 吉晴
前回の続きです。
前回は、ISO/FDIS 9001:2015、4.4.1について述べましたが、
今回は、ISO/FDIS 9001:2015、「4.1組織及びその状況の理解」です。
4.1組織及びその状況の理解では、
組織は、組織の目的及びその戦略的な方向性に関連し、かつ、その品質マネジメン
トシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の
課題を明確にしなければならない。
~途中省略~
注記2 外部の状況の理解は、国際、国内、地方又は地域を問わず、法令、技術、
競争、市場、文化、社会及び経済の環境から生じる課題を検討することによって容易
になる。
注記3 内部の状況の理解は、組織の価値観、文化、知識及びパフォーマンスに関する
課題を検討することによって容易になる。
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と書かれています。
FSMSで求められている食品安全ハザードだけに留まらず、外的な国際、国内、地方、
地域における、法令、技術、競争、市場、文化、社会、経済から生じる課題(≒ハザード)
や、内的な、組織の価値観、文化、知識、パフォーマンスに関する課題(≒ハザード)を
検討することによって、FSMSのハザード分析手法が、組織の継続的な成長の糧となること
を確信します。
ISO/FDIS 9001:2015では、内外の課題を決定(4.1)し、利害関係者のニーズを明確(4.2)にし、
これらを考慮したリスク及び機会(6.1)とその取組み方法を明確にするというステップになります。
ハザード分析と流れは変わりありません。
例えば、外的な課題の一例として、
①2015年6月16日に アメリカ食品医薬品局(FDA)がマーガリンなどに含まれる「トランス脂肪酸」
の発生源となる油の食品への使用を、2018年以降原則禁止 →原材料の変更に伴うコンタミ、価格高騰の危険
②国内では、SNSによる内部情報の拡散や、アルバイトによる不適切な画像投稿 →風評被害
③「機能性表示」という新しい訴求方法 →競合先販売好調
④新卒採用が8月解禁 →優秀な人的資源の確保、生産シフト調整
⑤地球温暖化 →カビ、害虫の多発生、エネルギーコスト増大
内的な課題の一例として、
⑥従業員の価値観変化による就業体制の見直し →残業を減らす、休日を増やすなど、人件費の増加
⑦組織の知識(ノウハウ)が属人的 →担当が変わればヒューマンエラー多発、教育訓練経費増加
⑧組織のビジョン共有不足 →帰属意識が薄く、目標達成意識が低い、問題が起こっても他人事
これらの課題に対して、管理手段(対策)があり、その責任権限、期限、スケジュール、
モニタリング、評価方法などが決まっていれば十分でしょう。
課題によっては議事録があれば十分かもしれません。記録や文書という体裁にあまり
こだわらないでやってみましょう。
ISO22000も改訂作業に入っています。
おそらくISO9001と同じHLS(高次構造;10章構成)を採用すると言われているので、今度の
ISO9001の改訂に合わせたリスクベース思考が、FSMSでも求められます。
食品会社であれば、食品安全ハザードはもちろんのこと、フードディフェンス関連ハザードなど、
事業プロセスに関する課題(≒ハザード)を明確にして、ハザード分析をすることをお勧めします。