主任コンサルタント 柏原 吉晴
今回は、ISO9001「8.3.3 設計・開発へのインプット」について解説します。
FSMS(ISO22000/FSSC22000)では、7.3全体が該当します。
FSMSでは食品安全に注力していますが、食品会社としては、品質向上も意図する成果
として認識していると思います。
よって、ISO9001の「8.3.3」を活用した品質面も考慮したハザード分析をお勧めします。
まず、8.3.3の要求事項は、次の通りです。
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組織は、設計・開発する特定の種類の製品及びサービスに不可欠な要求事項を明確
にしなければならない。組織は、次の事項を考慮しなければならない。
a)機能及びパフォーマンスに関する要求事項
b)以前の類似の設計・開発活動から得られた情報
c)法令・規制要求事項
d)組織が実施することをコミットメントしている、標準又は規範(codes of practice)
e)製品及びサービスの性質に起因する失敗により起こり得る結果
インプットは、設計・開発の目的に対して適切で、漏れがなく、曖昧でないものでなければならない。
設計・開発へのインプット間の相反は、解決しなければならない。
組織は、設計・開発へのインプットに関する文書化した情報を保持しなければならない。
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まず、ハザード分析する上で食品会社は、食品安全チームを編成し、製品特性(原料
・材料や最終製品)を調べて、意図した用途の決定、フローダイアグラムや工程管理
基準などを作成します。この一連のFSMSの活動に、以下の品質面の要素を追加します。
a)機能及びパフォーマンスに関する要求事項
これは、製品特性でインプットできますが、FSMSの食品安全に加えて、品質面を強化
した製品特性を明確にすると良いでしょう。
FSMSでも物理的特性や化学的特性もインプットしますが、意図する機能及びパフォー
マンス(成分、味、触感、見た目など)を明確にすると良いかもしれません。
b)以前の類似の設計・開発活動から得られた情報
これは、過去の類似製品から得られる情報をインプットします。
例えば、原材料コスト、生産性、顧客満足度(市場の反応、売上実績、シェア、販売
価格など)、プロモーション、販売価格、販売地域・チャンネルなどです。
c)法令・規制要求事項
これは、FSMSでも随所に法令規制要求事項の明確化が求められているので、インプット
情報としては問題無いでしょう。
d)組織が実施することをコミットメントしている、標準又は規範(codes of practice)
これは、顧客要求事項や、国やCodexが出すガイドラインや衛生規範などが該当します。
または、自社の標準書も該当させても良いです。
e)製品及びサービスの性質に起因する失敗により起こり得る結果
これは、過去の失敗事例です。
供給者及び原料・材料の選定、製造方法(工程管理、生産量、在庫量など)、販売
方法(顧客、地域、販売チャンネル、価格、広告宣伝、外装など)における、顕在化
した事例や潜在的なリスクを評価し、設計・開発に生かします。
以上が、ISO9001:2015が求める設計・開発へのインプットですが、私が述べた事例に
限定されず、組織として品質と安全の両方を追求し、より安全で、より売れる、より
コストが押さえられ、より生産性が向上するよう、製品の設計・開発を行っていただ
ければと思います。