主任コンサルタント 柏原 吉晴
今回は、ISO9001「8.3.2 設計・開発の計画」について解説します。
FSMS(ISO22000/FSSC22000)では、明確に該当する要求事項はありません。
よって、FSMSを運用する組織は、是非、ISO9001の「8.3.2」を活用してもらいたいです。
まず、8.3.2の要求事項は、次の通りです。
設計・開発の段階及び管理を決定するに当たって、組織は、次の事項を考慮しなければならない。
a)設計・開発活動の性質、期間及び複雑さ
b)要求されるプロセス段階。これには適用される設計・開発のレビューを含む。
c)要求される、設計・開発の検証及び妥当性確認活動
d)設計・開発プロセスに関する責任及び権限
e)製品及びサービスの設計・開発のための内部資源及び外部資源の
必要性
f)設計・開発プロセスに関与する人々の間のインタフェースの管理の
必要性
g)設計・開発プロセスへの顧客及びユーザの参画の必要性
h)以降の製品及びサービスの提供に関する要求事項
i)顧客及びその他の密接に関連する利害関係者によって期待される、
設計・開発プロセスの管理レベル
j)設計・開発の要求事項を満たしていることを実証するために必要な
文書化した情報
新製品を開発する上で、組織は上記のa)~j)を考慮して、設計・開発の段階及び管理
を決定することが求められています。
FSMSの設計・開発段階は、ハザード分析のための準備(7.3)をインプット、ハザード
分析(7.4)を実施し、オペレーション前提条件プログラム(7.5)とHACCPプラン(7.6)、
および、更新されたハザード分析関連文書(7.7)と検証プラン(7.8)をアウトプットします。
これら食品安全プロセスの一連の段階に、品質面のプロセスも加えて、
a)設計・開発活動の性質、期間及び複雑さを考慮し、いつも以上に綿密にハザード
分析に時間をかけたり、3C分析やマーケティングを実施するなどの段階を設けたり、
b)要求されるプロセス段階を考慮し、製品説明、フローダイアグラム、ハザードの明確化、
ハザード評価、および管理手段の選択・評価において、外部専門家のレビューを実施したり、
c)要求される設計・開発の検証として、オペレーション前提条件プログラムやHACCPプランの
有効性検証としての試験の実施や、妥当性確認活動として品質面も含めたテストマーケティング
を実施したり、
d)設計・開発プロセスに関する責任及び権限を明確にし、計画の進捗管理を確実にし、
e)製品及びサービスの設計・開発のための内部資源及び外部資源も計画当初に明確にした上で、
必要な経営資源を調達し、スムーズな設計開発管理を行い、
f)設計・開発プロセスに関与する人々の間のインタフェース管理として、食品安全チームメンバーや
メンバー外の営業部門や外部専門家、場合によっては顧客も含めた社内外のコミュニケーションを
円滑に管理し、
g)必要であれば、設計・開発プロセスの各段階への顧客およびユーザを参画させるよう調整します。
h)供給者からの調達手配や、外部委託先の管理文書の作成及び依頼、自社で使用するレシピや
製造基準書や各チェック表など、必要なアウトプット文書を整備し、実際に運用したり、監査したり、
量産開始後に製造に支障をきたすことが無いよう管理します。
i)顧客及びその他の密接に関連する利害関係者として、例えばOEM生産の場合は、顧客の要求事項を
確実に遵守し、顧客が求める設計管理を実施します。
j)設計・開発の要求事項を満たしていることを実証するために必要な文書化した情報として、
各種アウトプット文書と、管理手段の有効性の検証結果としての各種試験データやテスト生産の
評価文書などがあるでしょう。
このように、ISO9001ではきめ細かな設計開発の計画及び管理を行うので、FSMSを運用している組織は、
「8.3.2 設計・開発の計画」を組み込んだハザード分析を、是非、実施してみてはいかがでしょうか。