主任コンサルタント 柏原 吉晴
<ISO22000:2018年版解説(21)>
テーマ:経営に貢献するISO22000:2018
TBCSグループの食品会社向け専門コンサルティング組織である株式会社フィールズコンサルティングの柏原吉晴が担当します。
今回も、「8.1 運用の計画及び管理」について解説します。
8.1は、マネジメントシステムの共通要素(HLS)に該当します。
特にこの要求事項は、序文にも書かれているプロセスアプローチへの理解が重要となります。
序文では、プロセスアプローチは次の通り書かれています。
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0.3 プロセスアプローチ
0.3.1 一般
この規格は、適用される要求事項を満たしつつ、安全な製品及びサービスの生産を増強するため、FSMSを構築し、実施し、その有効性を改善する際に、プロセスアプローチを採用する。
システムとして相互に関連するプロセスを理解し、マネジメントすることは、組織が効果的かつ効率的に意図した結果を達成する上で役立つ。
プロセスアプローチは、組織の食品安全方針及び戦略的方向性に従って意図した結果を達成するために、プロセス及びその相互作用を体系的に定義し、マネジメントすることに関わる。
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2018年版のISO22000は、プロセスアプローチを採用し、重要視しています。
マネジメントシステムの各プロセスを体系的に定義付けして、それらのプロセス基準(プロセスの目標や合否判定基準など)の設定、その基準に沿った管理方法(手順書、標準書など)を定め、必要な内外の資源(ヒト、モノ、カネなど)を明確にし、確保し、プロセスの実践と管理上必要な文書・記録を維持し、管理すると良いです。
プロセスアプローチは、組織の食品安全方針及び経営戦略に沿った意図した結果=経営目標、各プロセスのパフォーマンス(部門目標など)に焦点が当てられ、且つ、効果的かつ効率的に達成することが求められます。
ここで、8.1に話を戻します。
8.1では、食品安全とリスク及び機会の取組に必要なプロセスの計画、実施、管理、維持、更新を求めています。
食品安全の取組みは、要求事項に十分に組み込まれているので、ここで重要な意味を持つのは、組織に対するリスクマネジメントです。
例えば、リスクとして新感染症を挙げて、プロセスを以下のように定義した場合、
①情報収集
②管理策決定
③管理策の実施
④管理策の見直し
それぞれのプロセスの効果的・効率的な基準を設定し、
①情報収集 →情報源、情報量、エビデンス・・・
②管理策決定 →業務優先度、手順作成、認識の共有度、経営資源・・・
③管理策の実施 →決定事項遵守度、検温結果、移動地域、勤務把握・・・
④管理策の見直し→事業への影響度(効果、効率)・・・
上記基準に沿った運用管理を行い、それぞれのモニタリング結果を分析・評価し、事業への影響度を考慮し、一定頻度で新感染症の再評価を行います。
休業判断、業務再開、従業員の労務管理など、プロセスの基準を定めて、エビデンスに基づく経営判断が求められます。
FSMSを、食品安全だけでないリスクマネジメントの仕組みとして是非、有効活用して下さい。
次回は、「8.2 前提条件プログラム(PRPS)」を解説します。