主任コンサルタント 柏原 吉晴
<ISO22000:2018年版解説(22)>
テーマ:経営に貢献するISO22000:2018
TBCSグループの食品会社向け専門コンサルティング組織である株式会社フィールズコンサルティングの柏原吉晴が担当します。
今回は、「8.2 前提条件プログラム(PRPS)」について解説します。
8.2(前提条件プログラム)は、
食品安全ハザードを含む汚染の予防、低減を容易にするために、確立、実施、維持、更新します。
つまり、OPRP管理やCCP管理するための、まさしく前提条件となります。
このプログラムは、食品安全チームによって承認され、生産システム全体で取り組むことが求められます。
要求事項(一部)は以下の通りです。
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8.2.3
PRP(s)を選択及び/又は確立する場合、組織は、適用される法令、規制及び相互に合意された顧客要求事項が特定されることを確実にしなければならない。
組織は、次のことを考慮することが望ましい:
a) ISO/TS 22002シリーズの該当するパート;
b) 該当する規格、実施規範及び指針
8.2.4
PRP(s)を確立する場合、組織は、次の事項を考慮しなければならない:
a) 建造物、建物の配置、及び付随したユーティリティ;
b) ゾーニング、作業区域及び従業員施設を含む構内の配置;
c) 空気、水、エネルギー及びその他のユーティリティの供給;
d) ペストコントロール、廃棄物及び汚水処理並びに支援サービス;
e) 装置の適合性並びに清掃・洗浄及び保守のためのアクセス可能性;
f) 供給者の承認及び保証プロセス(例えば、原料、材料、化学薬品及び包装);
g) 搬入される材料の受け入れ、保管、発送、輸送及び製品の取扱い;
h) 交差汚染の予防手段;
i) 清掃・洗浄及び消毒
j) 人々の衛生;
k) 製品情報/消費者の認識;
l) 必要に応じて、その他もの。
文書化した情報は、PRP(s)の選択、確立、適用できるモニタリング及び検証について規定しなければならない。
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前提条件として考慮すべき項目は、8.2.4のa)~l)となりますが、これらの項目名だけだと、具体的に実施すべき要求事項が明確ではないため、組織間での実施内容に大きな差が生じました。
これらを是正する意図もあり、ISO(国際標準化機構)から技術仕様書(TS:technical specification)が発行されました。
TSは、食品安全ハザードを管理することを補う目的で構築され、独立して使用されることを意図していない、つまり、ISO22000と共に使用されることが求められる規格になります。
ISO22000が、2018年版になって、ISO/TS22002シリーズの該当するパートの考慮が望ましいとされました。
組織によって、該当するISO/TS22002シリーズを選択し、そこで規定されている要求事項を、実施可能な範囲で取り組むことが望まれます。
要求事項の除外や代替手段は、ハザード分析で正当化され、且つ文書化することが求められます。
現状、考慮できる技術仕様書(TS)は、次の通りです。
ISO/TS22002-1 食品安全のための前提条件プログラム-第1部:食品製造
ISO/TS22002-2 食品安全のための前提条件プログラム-第2部:ケータリング
ISO/TS22002-3 食品安全のための前提条件プログラム-第3部:農業、畜産、養殖
ISO/TS22002-4 食品安全のための前提条件プログラム-第4部:食品容器包装の製造
ISO/TS22002-5 食品安全のための前提条件プログラム-第5部:輸送及び保管
ISO/TS22002-6 食品安全のための前提条件プログラム-第6部:飼料及び動物用食品の製造
多くの組織がISO/TS22002-1を考慮していると思われますが、これは2009年に発行された規格で、少々古い規格です。
その後に発行された他規格を読むことで、新たなPRP管理のヒントを得ることが多々あります。
是非とも、組織の前提条件プログラムの強化のために、より確実なOPRP管理、CCP管理のために、参考にすることをお勧めします。
次回は、「8.3トレーサビリティシステム」を解説します。