主任コンサルタント 柏原 吉晴
今回も、ISO 9001品質マネジメントシステムとISO/FSSC 22000食品安全マネジメントシステムの違いや特徴を解説します。
既にISO 9001取得済み組織で、ISO 22000又はFSSC 22000の認証取得を検討中の組織は、参考になるかと思います。また、食品を直接は取り扱わない組織でも、フードチェーン関連組織との取引があれば、参考になるかと思います。
前回は食品安全目標について解説しました。
プロセスアプローチの視点で目標管理が重要であること、及び食品安全目標の事例を多数]挙げました。
今回は、ISO 22000要求事項「5.6.1 外部コミュニケーション」について、解説致します。
ISO 9001の「7.2.3 顧客とのコミュニケーション」のa)~c)項は、ISO 22000の5.6.1のb)に該当し、集約されています。ISO 9001の7.2.3で明確にしたコミュニケーション手順をそのままISO 22000に適用できます、更に食品安全の要素として「意図した用途、保管条件、保管期限」等を付け加えれば、全く問題ありません。
他にも、ISO9001の「7.4.1 購買プロセス」は、ISO 22000の5.6.1のa)に該当すると言えます。ISO 9001は、直接的に供給者の評価・選定をすることを求めていますが、ISO 22000ではそこまで言及していません(ISO 22002では求められます)。
しかしながら、ISO 22000の5.6.1の最初の段落に書いてあることは、「食品安全に関する問題の十分な情報が、利用可能であることを確実にするために、供給者及び契約者とのコミュニケーション手続きを確立しなければならない。」と要約できるので、「食品安全に関する問題の十分な情報」を得るため、組織は供給者を食品安全の視点で必要文書を要求したり、第2者監査を実施しており、それが結果的に供給者評価をしていることになります。
ISO 22000の要求事項は、直接的に供給者評価を求めていなくても、本質的には供給者評とその管理を求めていることになります。
ISO 9001を取得済みの組織は、既にある顧客及び供給者との外部コミュニケーション手順を上手に活かしつつ、ISO 22000の仕組みを構築してもらえればと思います。
あとISO 22000の「5.6.1 外部コミュニケーション」では、上記a)及びb)以外に、c)法令・規制当局、及びd)他の組織、との外部コミュニケーションも求めています。ISO 9001にはない要求事項です。
まず、関係する法令や規制を明確にし、遵守することは当然のこととして、意図しない法令違反の防止や、定期的なハザード知識を得るためにも、法令・規制当局との情報交換は重要となります。
これも窓口をちゃんと決めて、情報の中身、コミュニケーション頻度などを手順化して、実施することです。法令の改正がもたらす経営上のインパクトは、時には大変大きなものになります。
次に「他の組織」ですが、メディア、市民団体、業界団体、地域の住民組織や学校などが、想定されるかもしれませんが、特段想定できなければ無理する必要はありません。
ただ、食品安全に関係するようであれば、コミュニケーション手順をしっかり構築することになります。
例えば、メディア対応で工場内の撮影や試食などさせてほしいとなった場合は、どのような手順で管理するのか、レポーターが思わぬ行動をとるかもしれません。
リスクを想定した上で事前打ち合わせが重要な外部コミュニケーションとなります。
最後に、ISO 22000の「5.6.1 外部コミュニケーション」で忘れてはならないのが、情報発信です。
最初に情報の受信に焦点が当てられることは当然ですが、ISO 22000は、フードチェーン全体で食品安全に取り組むことを求めている規格なので、食品安全ハザード等、組織が知り得た食品安全に係る情報は、適宜発信して、顧客、消費者、供給者等に対して注意を喚起したり、啓蒙することが望まれます。