主任コンサルタント 柏原 吉晴
ISO 9001品質マネジメントシステムとISO/FSSC 22000食品安全マネジメントシステムの違いや特徴、及びフードチェーン関連組織のISO9001の活用方法を解説します。
今回は、ISO 22000要求事項「5.7 緊急事態に対する備え及び対応」について、解説致します。
まず、要求事項は、「トップマネジメントは,食品安全に影響を与える可能性があり、かつ、フードチェーンにおける組織の役割と関連する,潜在的な緊急事態及び事故を管理するための手順を確立し、実施し、かつ、維持すること。」と書かれています。
他のマネジメントシステムにもある条項ですが、ISO 9001にはありません。
2015年改訂版であれば、リスク評価して緊急事態を想定し、備え及び対応手順を構築
することも出来ますが、2008年版のISO 9001では、仕組みとして直接要求していないため、構築していない組織がほとんどだと思います。
是非、これを機に構築してみては如何でしょうか。
事業を取り巻く環境変化や諸課題は、常に組織の持続的成長のリスク又は機会となり得ます。食品関連組織であれば、食中毒や食品事故が緊急事態としてまず想定できますが、これらは、ISO 22000要求事項全体として取り組むべきことなので、ここで言う緊急事態及び事故とは、例えば、「爆発火災、地震倒壊、停電、水害、雪害、バイオハザード(鳥インフルエンザ、新型インフルエンザ、BSEなど)、配送事故、近隣汚染、地下水汚染、噴火降灰、放射性物質汚染など」が挙げられます。
これらの食品安全に影響を与える恐れのある緊急事態および事故が、起こる可能性を考慮して、それに対処する方法についての手順を定め、実施、維持することになります。
食品安全に関する緊急事態が生じた場合に陣頭指揮をとることは、トップマネジメントに求められる重要な役割の一つであります。
手順構築のポイントは、
(1)緊急事態として何を想定しているか
(2)手順には予防的手順、及び発生後の応急的手順が含まれているか
(3)手順の有効性をどのように評価しているか
(4)定期的に訓練しているか
政治や経済、地球環境変化なども含め、製品安全を脅かす緊急事態はもちろんのこと、マネジメントシステムに与えるインパクトを考慮した緊急事態も想定するべきでしょう。
是非ISOを、事業継続のツールとしてご活用下さい。