主任コンサルタント 柏原 吉晴
今回は、ISO9001:2015「6.2品質目標及びそれを達成するための計画策定」について
解説します。これは旧版(2008年版)の「5.4.1品質目標」に該当します。
要求事項は、
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6.2.1
組織は、品質マネジメントシステムに必要な、関連する機能、階層及びプロセスに
おいて、品質目標を確立しなければならない。
品質目標は、次の事項を満たさなければならない。
a)品質方針と整合している。
b)測定可能である。
c)適用される要求事項を考慮に入れる。
d)製品及びサービスの適合、及び顧客満足の向上に関連している。
e)監視する。
f)伝達する。
g)必要に応じて、更新する。
組織は、品質目標に関する文書化した情報を維持しなければならない。
6.2.2
組織は、品質目標をどのように達成するかについて計画するとき、次の事項を決定
しなければならない。
a)実施事項
b)必要な資源
c)責任者
d)実施事項の完了時期
e)結果の評価方法
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旧規格の「5.4.1品質目標」では、実施計画まで要求されていませんでしたが、
ほとんどの企業は上記の通りの対応をされているのではないでしょうか。
規格上は変更されていますが、実際のところは大丈夫でしょう。この要求事項に
おいて、確実に目標管理のPDCAを回すことが求められます。
それでは、食品会社であれば、どのような目標にすればよいでしょうか。
当然ながら、食品安全の目標として挙げられるのが「食品事故・食中毒の発生ゼロ」
があります。次に「法令遵守(記載内容の間違い無し)」でしょうか。
食品安全として考えると、どうしても「製品の安全」という狭い視野になってしま
うので、マネジメントシステム全体、プロセスアプローチの視点で、目標を立てて
みましょう。マネジメントの目標は様々な外部・内部課題(4.1)や利害関係者の
要求事項(4.2)によって影響を受け、その結果、様々なリスクと機会があるので、
目標管理すべき目標だけで良いです。
目標の例として、
a)製品又は新製品
→製品事故・食中毒ゼロ、社内不良率低減、新製品開発件数、既存製品の改善件数
b)原料,材料及びサービス
→原価低減・歩留向上、供給者・契約者の評価点数アップ
c)生産システム及び装置
→生産システム改善によるコスト削減(生産性アップ)、装置や器具の更新(ハザード
の除去・低減数)、生産システム改善(制御プログラムなどの更新)によるセキュリティレベルの向上
d)製造施設,装置の配置,周囲環境
→施設の維持管理(年間維持費低減)、交差汚染箇所の減少、周囲環境整備・敷地外清掃の実施回数
e)清掃・洗浄及び殺菌・消毒プログラム
→ライン拭取り検査結果の菌数低減や残留タンパク質の低減、害虫捕獲数の減少
f)包装,保管及び配送システム
→包装不良数削減、長期滞留品の削減、配送コスト削減、配送不良ゼロ
g)要員の資格レベル及び/又は責任・権限の割当て
→資格取得、力量評価点数の向上、従業員満足度の向上
h)法令・規制要求事項
→法令遵守、保健所監査の評価点数アップ
i)食品安全ハザード及び管理手段に関連する知識
→新規ハザード及び新管理手段の調査・採用数、講習会実施数、学会発表の回数、
特許出願件数、論文掲載数
j)組織が順守する,顧客,業界及びその他の要求事項
→顧客監査の評価点数アップ、所属団体への貢献度、顧客満足度調査点数アップ
k)外部の利害関係者からの引き合い
→一般消費者の見学受け入れ、フードコミュニケーション実施数(出張授業、イベント参加など)
l)製品に関連した食品安全ハザードを示す苦情
→苦情件数削減(品質と食品安全)
m)食品安全に影響するその他の条件
→従業員3年定着率アップ、残量時間の削減、食品リサイクル率向上、外部審査
指摘件数削減、売上高総利益率向上、労働災害ゼロ
上記の目標は一例です。
ISO/FSSC22000を認証取得されている組織の方であれば、ピンと来たかもしれませんが、
これらa)~m)の項目は、ISO22000規格の「5.6.2内部コミュニケーション」から引用しています。
是非、このような目標を積極的に設定して、組織力をアップして下さい。