主任コンサルタント 柏原 吉晴
今回は、ISO9001:2015「6.3変更の計画」について解説します。
これは旧版(2008年版)の「5.4.2品質マネジメントシステムの計画」のb)「品質マネ
ジメントシステムの変更を計画し、実施する場合には、品質マネジメントシステムを
“完全に整っている状態”(integrity)に維持する。」に該当します。
「6.3変更の計画」の要求事項は、
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6.3
組織が品質マネジメントシステムの変更の必要性を決定したとき、
その変更は、計画的な方法で行わなければならない。
組織は、次の事項を考慮しなければならない。
a)変更の目的、及びそれによって起こり得る結果
b)品質マネジメントシステムが“完全に整っている状態”(integrity)
c)資源の利用可能性
d)責任及び権限の割当て又は再割当て
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旧規格では、2015年版要求事項のb)しか言及していません。
2015年版はリスクベースで考えることが要求されているので、a)で「起こり得る結果」
を求めているのでしょう。リスクを軽減又は除去しながら、変更管理しなさいと解釈
できます。
同様に、「c)資源の利用可能性」と「d) 責任及び権限の割当て又は再割当て」は、
変更に伴って影響を受ける(リスクがある)と想定されるプロセスに対して、リスク
を軽減又は除去するために必要な経営資源(人、モノ、カネ、情報など)の配分と必
要な責任・権限の付与を求めています。
なおISO9001:2015年版では、6.3以外にも、
「8.2.4製品及びサービスに関する要求事項の変更」
「8.3.6設計・開発の変更」
「8.5.6変更の管理」(・・・8.5製造及びサービス提供における変更)
など、変更についての要求事項が多くありますが、後日解説します。
変更管理とは、変更に伴って起こりうる結果、及び起こった結果をレビューし、
必要な処置をとることと考えます。
事前の想定(リスクマネジメント)と、事後の対処(クライシスマネジメント)の
両方が重要です。
ISO9001は、その点が強化されましたが、ISO22000やFSSC22000食品安全マネジメント
システムでは、検証や評価の要求事項はありますが、焦点がハザード分析に当たるこ
とで、どうしても食品安全のみの対応になります。
そこで、ISO22000の「5.6.2内部コミュニケーション」の要求事項a)~m)の各項目を
パフォーマンス評価の対象(監視・測定対象)にしてはいかがでしょうか。
食品安全マネジメントシステムの「5.6.2内部コミュニケーション」では、「次の変更
があれば・・・」と書かれており、変更後の対応とも読み取れます。これを、変更前か
ら意識し「5.6.2内部コミュニケーションa)~m)」の監視及び測定を実施することで、
意図しない変更・変化の予兆を捉えて、リスク評価し、必要な資源や責任・権限を割り
当て、組織のパフォーマンスに多大な負の影響を与えないよう、「6.3変更の計画」を
することが望まれます。
当然ながら、食品安全に限定されない取り組みが推奨されます。