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コンサルタント コラム

主任コンサルタント 柏原 吉晴

 

今回は、前回解説したISO9001「8.5.1製造及びサービス提供の管理」
のg)「ヒューマンエラーを防止するための処置を実施する」について解説します。

この要求事項は、FSMS(ISO22000/FSSC22000)にはありませんが、ハザード分析の
インプットに、ヒューマンエラー由来のハザードを想定した場合は、管理対象になります。
しかしながら、多くの場合、食品安全に傾倒しているので、効果的なヒューマンエラー防止
処置が構築できているとは言えないでしょう。

食品安全はもちろんのこと、品質や労働安全の要素も入れた、ヒューマンエラー防止処置の
仕組みが望まれます。

ISO9001の8.5.1の要求事項は、次の通りです。

―――――――――――――――――――――――――――

8.5.1 製造及びサービス提供の管理

組織は、製造及びサービス提供を、管理された状態で実行しなければならない。

管理された状態には、次の事項のうち、該当するものについては、

必ず、含めなければならない。

a)~f)省略

g)ヒューマンエラーを防止するための処置を実施する。

h)リリース、顧客への引渡し及び引渡し後の活動を実施する。

―――――――――――――――――――――――――――

g)は、作業上のヒューマンエラーを防止する手段を構築し、実行することです。
FSMSでは、ハザード分析が広い意味では該当しますが、「人間」に焦点を当てている
点において、ISO9001に特異的な要求事項だと考えます。

ヒューマンエラーは、プロセスアプローチの視点から、次の3つに分類できます。

①インプットエラー
情報をインプットする段階で発生するエラー。
「見落とし」「見間違い」「聞き間違い」など。正しく「認知」できていない事例です。

例として、
・機器の異常発生を知らせる警告ランプに「気づかず」不良品を大量に出した。
・レシピの配合数字を「見間違えて」成分組成が変わり不良品を大量に出した。
・上司の生産指示を「聞き間違え」、不用な製品を生産した。
・受入検査で原材料からの異臭に「気づかず」使用した。
・包装フィルムの仕様が似ていて「気づかず」、他製品のフィルムをセットした。

②プロセスエラー
インプット後のプロセスで発生するエラー。
「誤知識」「経験不足」「過信」「思い込み」など。正しく「思考」「判断」できていない事例です。

例として、
・新入社員が、商品ごとの加熱温度の違いの「誤知識」から、誤った加熱温度で製品を駄目にした。
・ベテラン作業員が、機器不良の兆候があったにもかかわらず、経験を「過信」し、部品破損が発生、
異物混入を招いた。
・廃棄すべき不適合品を、間違って持っていかないだろうという「思い込み」により、他の作業員が
不適合品を出荷した。

③アウトプットエラー
正しく認知し、判断したが、その後の間違った行動や作業で発生するエラー。

「やり忘れ」「やり間違い」「手抜き」など。正しく「実行」「行動」できていない事例です。

例として、
・上司から指示された作業を「忘れて」しまい、納期に間に合わなくなった。
・金属探知機で反応した製品を、不適合品だと分かっていても、 うっかり「間違って」ラインに戻した。
・2時間おきに検査することは分かっているが、「手抜き」をして検査せず、不良の検出が遅れ、不良品を
多量に出した。

これらのヒューマンエラーから、ISOの是正処置に沿って、以下を実施します。

1.発生原因を追求する。
2.発生原因を除去すたための再発防止策又は予防処置を構築する。
3.2を実行し、その効果を評価する。
4.評価の結果から、仕組みの再構築、必要な改訂を行う。

再発防止策や予防処置の例として、

①のインプットエラーについては、
・音と視覚で知らせる。
・表示する。
・似たようなものを区別しやすくする。
・大きく書く。
・復唱する。書面で示す。
・目に付き易い場所に移動する。
・ダブルチェックする、また、セルフチェックの場合は指差呼称する。
・人の五感ではなく、機械のセンサーで検知させる。
など、

②のプロセスエラーについては、
・教育訓練の効果測定し、確実に知識を身に付けさせる。
・復唱させる。
・点検(チェック)の重要性を再認識させる。
・ダブルチェックする。
・識別する。
・生産設備を自動化する。
など、

③のアウトプットエラーについては、
・中間確認する。
・ダブルチェックする、また、セルフチェックの場合は指差呼称する。
・作業の重要性を再認識させる。
・作業をチェックリスト化し、実施内容をチェックする。
・生産設備を自動化する。
など、

これらを実施することで、安易なヒューマンエラーは防ぎたいものです。
ただ、ヒューマンエラーは完全に無くなるものではありません。
よって、実施事項の見直し、有効性の検証が必要であり、検証結果を受けて、再度、
仕組みの構築が必要となります。KYT(危険予知訓練)などを試してみるのも良いです。

FSSCの追加要求事項(Version4)では、フードディフェンスの脅威影響評価、食品偽装
防止の脆弱性評価が求められています。
これら脅威や脆弱性に対する防止策にも、ヒューマンエラーが潜んでいます。
一度、ヒューマンエラーを意識したリスク評価をしてみてはいかがでしょうか。

柏原 吉晴(かしわばら よしはる)

Yoshiharu Kashiwabara

TBCSグループ、株式会社フィールズコンサルティング 取締役
(ISO / FSSC / 経営支援のコンサルティング実績 300社以上)
東京農工大学大学院、ビジネス・ブレークスルー大学大学院修了(農学修士、MBA)
QMS及びFSMS審査員研修修了

大学院修了後、ホテル・旅館向けの経営及び衛生コンサルティングを行う組織で、 全国40社以上のホテル・旅館の人件費削減、HACCP厨房設計、システム運営指導、ISO認証支援を行い、また、全国50社以上の食品衛生指導、浴場衛生指導を定期的に行ってきた。
2008年からは、株式会社TBCソリューションズで、QMS、EMS、及びFSMSなどの認証取得や運営のコンサルティング、内部監査員養成研修講師、及び経営コンサルティングを担当した。
2018年10月からは、TBCソリューションズから分社化し、食品専門のコンサルティングファームとして、株式会社フィールズコンサルティングを設立、取締役に就任し、 FSMSを中心に、食品会社向けの総合的なコンサルティングを提供している。また、全国各地での講演や、執筆活動も行っている。

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