主任コンサルタント 柏原 吉晴
今回は、ISO9001「8.6 製品及びサービスのリリース」について解説します。
FSMSでは、この要求事項と同等のものはありません。
ISO9001の8.6の要求事項は、次の通りです。
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組織は、製品及びサービスの要求事項を満たしていることを
検証するために、適切な段階において、計画した取決めを
実施しなければならない。
計画した取決めが問題なく完了するまでは、
顧客への製品及びサービスのリリースは行ってはならない。
ただし、当該の権限をもつ者が承認し、かつ、顧客が承認したとき
(該当する場合には、必ず)は、この限りではない。
組織は、製品及びサービスのリリースについて文書化した情報を
保持しなければならない。これには、次の事項を含まなければならない。
a)合否判定基準への適合の証拠
b)リリースを正式に許可した人(又は人々)に対するトレーサビリティ
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この要求事項は以下を求めています。
①製品及びサービスの適合性を各段階で検証すること。
②未検証又は不適合がある状態で、顧客へ製品及びサービスを提供しないこと。
③製品の品質及び安全性の責任者が承認し、且つ、顧客承認が得られれば、
仮に不適合状態であっても、出荷を許可する(特別採用)。
④製品及びサービスの出荷判定記録には、合否判定基準への適合の証拠と、
出荷許可者の署名又は記号を記載すること。
①の検証については、FSMSでも検証プランがあります。
②も検証プランに含まれます。
③の特別採用は、食品組織にはあまり馴染みがないかもしれません。
顧客要求事項通りではなくても、顧客の品質管理担当者に確認してもらい
OKが出れば、出荷するというものですが、食品安全においては、安全性が
担保できない製品に対して、顧客が受け入れてくれることは少ないでしょう。
しかしながら、ISO22000も「7.10.3.2 リリースのための評価」で、
管理手段が有効で、許容水準が満たされていれば、リリースしても良い
という判断をすることができます。
ISO9001も22000も、管理・プロセス上の不適合があっても、
品質及び安全性における許容水準をクリアすれば、
場合によっては出荷許可されることを意味します。
重要なのは、ISO9001で求めている④の記録です。
製品及びサービスの各検証記録や出荷判定記録には、
合否判定基準への適合の証拠と、許可者を記録することです。
特に、特別採用の場合は、組織の責任者及び顧客責任者の署名が
後々のトラブル回避のためにも重要な対応となります。