主任コンサルタント 柏原 吉晴
<ISO22000:2018年版解説(1)>
テーマ:経営に貢献するISO22000:2018
今回から改訂されたISO22000:2018年版について解説します。
まずこの改訂の背景ですが、ISO 9001(QMS)、ISO 14001(EMS)、ISO/IEC 27001(ISMS)、ISO 22000(FSMS)など、複数のISOマネジメントシステムを
導入・運用する組織にとって、それぞれの規格の章立て、要求事項、用語、定義が異なることから、規格間の整合性を確保したり、効率よく運用したりすることは、これまで困難でした。
この問題を解決するため、ISO(国際標準化機構)では2006年より議論を重ねてきて、2012年5月から、現行の
ISOマネジメントシステム規格の見直し・改訂を行う際は、ISOマネジメントシステム規格の共通要素(HLS)を採用することを義務付けました。
ISO 9001、ISO 14001、ISO/IEC 27001は、この共通要素を採用し、ISO/IEC 27001が2013年に、ISO 9001及びISO 14001が2015年に改訂、発行されました。
一方、ISO 22000については、ISO 22000を担当する作業部会ISO/TC 34 にて、2013年11月から始まったISO 22000の改訂作業は、2015年10月にWD (作業原案) が承認、2017年2月にCD (委員会原案)が承認、2017年7月にDIS (国際規格案)が承認、そして、FDIS (最終国際規格案) が2月28日に発行され、8週間の期限で投票、賛成多数で承認、2018年6月19日に、ISO 22000:2018が発行されました。
今回の改訂での大きな目玉は、「リスクベース思考」です。
序文の「0.3.3 リスクに基づく考え方」では、
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リスクに基づく考え方は、有効な食品安全マネジメントシステムを達成するために必須である。この規格では、リスクに基づく考え方は、0.3.2のプロセスアプローチで記述したように組織及び運用の二つのレベルで取り上げる。
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と書かれており、組織及び運用の二つのレベルでリスクに取り組むとし、
0.3.3.2 組織のリスクマネジメント(一部抜粋)ーーーーーーーーー
組織は、この規格の要求事項に適合するために、組織のリスクに対応するための取組みを計画し、実施する。
リスクへの取組みによって、食品安全マネジメントシステムの有効性の向上、改善された結果の達成、及び好ましくない影響を防止するための基礎が確立する。
0.3.3.3 ハザード分析‐運営のプロセス(一部抜粋)ーーーーーーー
運用レベルでのHACCP原則に基づいたリスクに基づく考え方の概念は、この規格に暗黙的に示されている。
上記の通り、「組織」「運用」の両面においてリスクに取り組むことを言及しています。
もともとHACCPの仕組みが旧規格の7章にあることから、運用のリスクに関しては取り組まれています。
重要なポイントは、組織のリスクに関しても取り組むことが求められている点です。
食品偽装のような組織のガバナンスに関わることや、フードディフェンスのような意図的攻撃や、
原材料の安定的調達リスクなど、これらに限らず、組織にはこれまでの守備範囲だった食品安全ハザード以外の多くのリスクが存在します。
今回の改訂を機に、食品安全はもとより、組織の持続的成長のための礎を構築する良い機会にしてほしいと願います。
次回から要求事項の解説に入ります。