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コンサルタント コラム

主任コンサルタント 柏原 吉晴

<ISO22000:2018年版解説(13)>
テーマ:経営に貢献するISO22000:2018

TBCSグループの食品会社向け専門コンサルティング組織である株式会社フィールズコンサルティングの柏原吉晴が担当します。

今回は、7.1「資源」の7.1.5「外部で開発されたFSMSの要素」、7.1.6「外部から提供されるプロセス、製品又はサービスの管理」を解説します。

組織にとって経営資源の管理は、健全な組織運営に欠かせない要素であり、経営の課題に直結します。また2005年版に無い要求事項もあります。
要求事項は次の通りです。

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7.1.5 外部で開発された食品安全マネジメントシステムの要素

組織が、FSMSの、PRP、ハザード分析及びハザード管理プラン(8.5.4参照)を含む外部で開発された要素の使用を通じて、そのFSMS を確立、維持、更新及び継続的改善をする場合、組織は、提供された要素が次のとおりであることを確実にしなければならない:

a) この規格の要求事項に適合して開発されている;
b) 組織の現場、プロセス及び製品に適用可能である;
c) 食品安全チームによって、組織のプロセス及び製品に特に適応させてある;
d) この規格で要求されているように実施、維持及び更新されている;
e) 文書化した情報として保持されている。

7.1.6 外部から提供されるプロセス、製品又はサービスの管理

組織は、次の事項を行わなければならない:

a) プロセス、製品及び/又はサービスの外部提供者の評価、選択、パフォーマンスのモニタリング及び再評価を行うための基準を確立し、適用する;
b) 外部提供者に対して、要求事項を適切に伝達する;
c) 外部から提供されるプロセス、製品又はサービスが、FSMS の要求事項を一貫して満たすことができる組織の能力に悪影響を与えないことを確実にする;
d) これら活動及び、評価並びに再評価の結果としてのあらゆる必要な処置について、文書化した情報を保持する。

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まず、7.1.5ですが、
この要求事項は、外部の利害関係者、例えば親会社や顧客が実施したハザード分析によって決定したハザード管理プランやPRPを自社に適用して、OEM生産する場合や、業界規格(業界HACCPなど)を自社のシステムとして、そのまま適用している組織に該当します。
自社で一から構築、運用している組織の場合は、この7.1.5の要求事項は該当しません。

この外部で構築したFSMSが、ISO22000に適合し、適切に維持・更新されていること、自社の製品や工程、製造環境に合っていること、
適切な記録を残して、本システムが適切かつ妥当であること、これらの条件を食品安全チームがしっかり確認することを求めています。

ある意味借り物のFSMSを運用している組織は、例え、利害関係者からの指示通りに運用していても、ちゃんと自分たちで理解し、必要であれば再構築するぐらいの積極的な取り組みが期待されます。

次に、7.1.6ですが、
この要求事項は、いわゆるサプライヤー(供給者)評価の手順です。
サプライヤー(=外部提供者)を、評価基準、選択基準に沿って管理します。
当然ながら、評価結果および改善要求などの結果は、記録として維持します。
サプライヤーに対する必要な食品安全上の要求事項は伝達され、遵守され、組織の製造・加工に支障をきたさないサプライヤー管理が求められます。

管理の度合いとしては、リスク評価に基づき判断し、更に、自社の経営戦略からサプライヤー管理の在り方を、定期的に見直すことが重要だと考えます。

自社の経営戦略とサプライヤー(外部提供者)の関係性は、例えば、
1.海外販路拡大、売上拡大 → 海外での調達が可能か?
2.新商品開発の推進 → 新商品の原材料について調達可能か?
3.現状のコストを大幅削減 → 価格低下が可能か?体力はあるか?
などとなり、経営戦略に沿ったサプライヤーの選択と集中が必要となります。また、この前提として3C分析(市場・顧客/競合/自社)を行うことも重要です。

市場・顧客分析から、新商品開発や、コスト低減などの必要性が挙げられるのであれば、当社にない強みを持った新規委託先の開拓や、コスト低減依頼などが必要になります。
競合分析から、競合の強みとして生産拠点が多いことが挙げられるのであれば、戦略に沿った生産拠点として、新たな生産委託先の選択が必要になります。
自社分析から、ボトルネックとなるサプライチェーンがあれば、その調達先の経営能力(マネジメント能力)が重要となり、企業統治や財務状況(信用調査)などの評価係数が重くなります。

形式的なサプライヤー管理は、自社にとって負担でしかありません。
ISOやFSSCの審査だけを考えれば、ほとんどの組織の仕組みは十分に機能し、要求事項を満たしていますが、本質的なマネジメントを考えると、十分ではないとも思えます。
組織の戦略を受けて、既存のサプライヤー管理の仕組みを、シンプル、且つ、フレキシブルに変えていくことを望みます。

次回は、「7.2 力量」を解説します。

柏原 吉晴(かしわばら よしはる)

Yoshiharu Kashiwabara

TBCSグループ、株式会社フィールズコンサルティング 取締役
(ISO / FSSC / 経営支援のコンサルティング実績 300社以上)
東京農工大学大学院、ビジネス・ブレークスルー大学大学院修了(農学修士、MBA)
QMS及びFSMS審査員研修修了

大学院修了後、ホテル・旅館向けの経営及び衛生コンサルティングを行う組織で、 全国40社以上のホテル・旅館の人件費削減、HACCP厨房設計、システム運営指導、ISO認証支援を行い、また、全国50社以上の食品衛生指導、浴場衛生指導を定期的に行ってきた。
2008年からは、株式会社TBCソリューションズで、QMS、EMS、及びFSMSなどの認証取得や運営のコンサルティング、内部監査員養成研修講師、及び経営コンサルティングを担当した。
2018年10月からは、TBCソリューションズから分社化し、食品専門のコンサルティングファームとして、株式会社フィールズコンサルティングを設立、取締役に就任し、 FSMSを中心に、食品会社向けの総合的なコンサルティングを提供している。また、全国各地での講演や、執筆活動も行っている。

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