主任コンサルタント 柏原 吉晴
<ISO22000:2018年版解説(24)>
テーマ:経営に貢献するISO22000:2018
TBCSグループの食品会社向け専門コンサルティング組織である株式会社フィールズコンサルティングの柏原吉晴が担当します。
今回は、「8.4 緊急事態への準備及び対応」について解説します。
緊急事態への準備及び対応は、FSMSの取組みにおいて製品の安全性のみならず、組織のBCP(事業継続プラン)にも関わる重要な取り組みです。
想定できる潜在的な緊急事態やインシデントを想定し、予めそれらに対する「準備」と発生時の「対応」方法を構築し、組織のレジリエンスを向上させましょう。
要求事項は以下の通りです。
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8.4 緊急事態への準備及び対応
8.4.1 一般
トップマネジメントは、食品安全に影響を与える可能性があり、またフードチェーンにおける組織の役割に関連する潜在的緊急事態又はインシデントに対応するための手順が確立していることを確実にしなければならない。
これらの状況及びインシデントを管理するために、文書化した情報を確定し、維持しなければならない。
8.4.2 緊急事態及びインシデントの処理組織は、次の事項を行わなければならない:
a) 次により、実際の緊急事態及びインシデントに対応する:
1) 適用される法令・規制要求事項が特定されることを確実にする;
2) 内部コミュニケーション;
3) 外部コミュニケーション(例えば、供給者、顧客、該当する機関、メディア);
b) 緊急事態又はインシデント及び潜在的な食品安全への影響の度合いに応じて、緊急事態のもたらす影響を低減する処置をとる;
c) 実務的であれば、手順を定期的に試験する;
d) 何らかのインシデント、緊急事態又は試験の後は、文書化した情報をレビューし、必要に応じて更新する。
注記
食品安全及び/又は生産に影響を与える可能性のある緊急事態の例は、自然災害、環境事故、バイオテロ、作業場での事故、公衆衛生での緊急事態及びその他の事故、例えば、水、電力又は冷媒の供給などの不可欠なサービスの中断である。
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組織の潜在的緊急事態又は緊急事態に至る可能性の高い事象(インシデント)
に対する管理手順を作成しなければなりません。
潜在的緊急事態の例として、自然災害、環境事故、バイオテロ、作業場での事故、公衆衛生での緊急事態、及びその他の事故、例えば、水、電力又は冷媒の供給などのサービス停止です。
そして、想定した緊急事態に対して、以下の管理手順を作成します。
①適用される法令・規制要求事項を明確にし、法令遵守しましょう。例えば火災を想定している場合は、消防法が関係します。
防火管理者の設置や、消防訓練の実施が求められます。
②内部コミュニケーションとして、社内連絡網や連絡手段、役割を明確にしましょう。
緊急時の従業員の安否確認や対応に時間がかかれば、それだけ再稼働は遅くなります。
③外部コミュニケーションとして、関連機関との連絡方法、対応方法を明確にしましょう。
例えば、供給者、顧客、消防、救急、清掃業者、メンテナンス業者、自治体、メディア等との連絡方法、担当窓口、連絡すべき情報の整理など、事前準備が重要です。
④緊急事態又はインシデント、及び製品安全への影響に応じて、
悪影響をなるべく低減するための処置を講じましょう。
これには予防対策と、発生時の管理の両方を盛り込むと良いです。
例えば、停電という緊急事態に対して、事前に予備電源を用意しておいたり、発生時には扉の開閉を禁止し、出荷予定のある在庫については外部倉庫や保冷車を確保するなどが考えられます。
⑤実際に実施可能であれば、本手順を定期的に試験しましょう。
この定期的な訓練・試験により、緊急事態発生時に的確な行動ができます。
⑥何らかのインシデント、緊急事態又は試験の後に、本手順の見直し、更新します。
何を想定するかで手順の中身が変わりますが、現在の新型コロナ感染拡大は、まさしく「公衆衛生での緊急事態」です。
トップは、マネジメントする上で重要な緊急事態を想定し、様々なリスクに対応できる強靭な組織の構築が望まれます。
次回は、「8.5.1 ハザード分析を可能にする予備段階」を解説します。