主任コンサルタント 柏原 吉晴
今回は、「8.1 運用の計画及び管理」について解説します。
旧版(2008年版)の7.1に該当する要求事項で、基本的には規格の意図するものは変わ
りません。
FSMSにはない要素として、「資源」と「意図しない変更」を中心に解説します。
要求事項は以下の通りです。
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組織は、次に示す事項の実施によって、製品及びサービスの提供に関する要求事項
を満たすため、並びに箇条6で決定した取組みを実施するために必要なプロセスを、
計画し、実施し、かつ、管理しなければならない。
a)製品及びサービスに関する要求事項の明確化
b)次の事項に関する基準の設定
1)プロセス
2)製品及びサービスの合否判定
c)製品及びサービスの要求事項への適合を達成するために必要な
資源の明確化
d) b)の基準に従った、プロセスの管理の実施
e)次の目的のために必要とされる程度の、文書化した情報の明確化、
維持及び保持
1)プロセスが計画どおりに実施されたという確信をもつ。
2)製品及びサービスの要求事項への適合を実証する。
この計画のアウトプットは、組織の運用に適したものでなければならない。
組織は、計画した変更を管理し、意図しない変更によって生じた結果をレビューし、
必要に応じて、有害な影響を軽減する処置をとらなければならない。
組織は、外部委託したプロセスが管理されていることを確実にしなければならない。
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まず、a)は、ISO22000の7.3.3で明確化しています。b)の1)は、フローダイアグラムで、
2)は、管理手段と許容水準または許容限界で管理できています。
d)は、モニタリング手順で、e)は、OPRPのプランおよびHACCPプラン、各種モニタリング
記録です。外部委託プロセスの管理文書は、4.1で求められています。
残りの、
①c)製品及びサービスの要求事項への適合を達成するために必要な資源の明確化
②組織は、計画した変更を管理し、意図しない変更によって生じた結果をレビューし、
必要に応じて、有害な影響を軽減する処置をとらなければならない。
この２つについて、ISO9001:2015を運用する組織は、FSMSに上手に反映させてほしい
と思います。
まず①ですが、FSMSにおいて、各プロセスに必要な資源を明確にするという発想は
あまりありません。ISO22000の6.1に資源に対する言及がありますが、要求事項とし
ては不十分です。
各プロセスに必要な資源については、ISO22000の「7.3.5.2工程の段階及び管理手段
の記述」に記載するとよいと考えます。その資源（ヒト、モノ、カネ、情報etc）と、
6.2人的資源と6.3インフラ、6.4作業環境（≒前提条件プログラムで管理も可）とを、
管理上、統合することをお勧めします。
次に②の変更管理ですが、FSMSにおいて、予測されうるハザードは、管理対象となり、
検証プランにおいて、実施および効果の検証がされますが、意図しない変更はカバー
できていないと考えます。外部環境（例；供給者の倒産に伴う供給者の変更、天災・
事故に伴う一時供給停止など）や内部環境（例；急な欠勤によるシフトの穴、意図し
ない設備トラブルなど）は、一部は「5.7緊急事態への備え及び対応」でカバーしてい
るかもしれませんが、まだまだ不十分と言えるでしょう。
ここに、2015年版の組織の内外の課題とリスク及び機会の取り組み＝リスクベース思考
が活きてきます。
食品会社は、意図しない変更を想定し、発生時の変更管理手順（４M１E管理）を構築
しておくことをお勧めします。
