主任コンサルタント 柏原 吉晴
ISO 9001品質マネジメントシステムとISO/FSSC 22000食品安全マネジメントシステム
の違いや特徴、及びフードチェーン関連組織のISO 9001の活用方法を解説します。
今回は、ISO 22000要求事項「5.6.2 内部コミュニケーション」について解説致します。
ISO 9001にも「5.5.3 内部コミュニケーション」の要求事項があります。
「トップマネジメントは、組織内にコミュニケーションのための適切なプロセスが確立されることを確実にしなければならない。また、品質マネジメントシステムの有効性に関しての情報交換が行われることを確実にしなければならない。」と書かれています。とても抽象的です。
ISO 22000は、適切なプロセスについても、交換すべき情報についても、より具体的です。
適切なプロセスとは、
(1)従業員は、変更があれば、その情報をタイムリーに食品安全チームに伝える
(2)食品安全チームは、この情報を、システムの更新に含める
(3)トップマネジメントは関連情報をマネジメントレビューへのインプットに含める
これをタイムリー、且つ定期的に実施します。
交換すべき情報も、以下の通り定めています。
a)製品又は新製品
b)原料,材料及びサービス
c)生産システム及び装置
d)製造施設,装置の配置,周囲環境
e)清掃・洗浄及び殺菌・消毒プログラム
f)包装,保管及び配送システム
g)要員の資格レベル及び/又は責任・権限の割当て
h)法令・規制要求事項
i)食品安全ハザード及び管理手段に関連する知識
j)組織が順守する,顧客,業界及びその他の要求事項
k)外部の利害関係者からの引き合い
l)製品に関連した食品安全ハザードを示す苦情
m)食品安全に影響するその他の条件
これらの変更情報の管理が4М管理になることは、以前のコラムでも解説しましたが、ISO 9001認証組織は、是非、ISO 22000を参考に内部コミュニケーションを意味のある仕組み
にして下さい。
ISO 22000ではタイムリーにコミュニケーションを求めています。
コミュニケーションのネタは前述の通りですが、半分は内部情報、もう半分は外部情報がネタ元になります。それでは、二つネタを提供します。
毎日新聞の報道(2014年10月04日)で、アクリルアミドについて載っていました。
表題が「スナック含有物質に発がん性」、本文(抜粋)は、「ポテトチップスなどに含まれる、化学物質のアクリルアミドのリスクを評価している内閣府食品安全委員会は3日、次世代にも影響が及ぶ「遺伝毒性をもつ発がん物質」との評価案を示した。アクリルアミドに対する国内での評価は初めて。今後、メーカーでの低減策が求められそうだ」と書かれています。
揚げ菓子、焼き菓子などを製造・販売をしている組織にとっては、消費者に自社製品のイメージを悪くする、好ましくない記事かと思います。
問題は量であり、動物実験と同等の大量摂取をしたら、発がんリスクを上げるというものなので、バランスの良い食事を心がけていれば、ビビる必要の無い記事です。
しかしながら食品企業にとっては、消費者に対して自社製品の良いイメージを持ってもらいたいので、少しでもアクリルアミドの生成を抑えるよう、日々、製品の研究・開発をされているところかと思います。
もう一つネタとして、食塩を取り上げたいと思います。
食塩の取り過ぎが健康に悪影響をもたらすことは周知の事実と思います。生活習慣病の脳血管疾患や虚血性心疾患の原因となる高血圧リスクを下げるために、減塩が必要となります。
厚生労働省の国民健康・栄養調査結果(平成24年)によると、成人男性で1日11.3g、女性で9.6gの食塩摂取となっています。これを「日本人の食事摂取基準2015年版」では、男性1日8.0g未満、女性で7.0g未満を目標に掲げています。ちなみに世界保健機構(WHO)は、1日5g未満を推奨しています。
日本人の健康に大きな影響を与えている食塩を、ハザードに設定している組織は一体どのくらいあるでしょうか?
日本人は健康志向が強く、ある製品や食材が「健康に良い」という情報が流れれば、あっという間に品薄になる程の国民です。
食品企業のミッションとして、品質・安全目標として、もしくはハザード管理として、健康増進に寄与するISO 22000があっても良いと思います。むしろ、そのようなシステム改善を推進して頂きたいというのが、私の本音です。