主任コンサルタント 柏原 吉晴
今回は、ISO9001「8.5.3顧客又は外部提供者の所有物」について解説します。
この要求事項は、FSMS(ISO22000/FSSC22000)にはありません。
対象となる所有物は、材料、部品、道具、設備、施設、知的財産、個人情報などが
含まれます。これらの管理は、FSMSでは、PRP(前提条件プログラム)の範疇で管理
できるものと思われます。
ただ、FSMSは食品安全に特化していることから、品質面を含めた所有物管理が重要で
あることは言うまでもないでしょう。
信頼向上のため、顧客及びパートナー(外部提供者)を重視した姿勢が重要となります。
ISO9001の8.5.3の要求事項は、次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――
組織は、顧客又は外部提供者の所有物について、それが組織の管理下にある間、又は
組織がそれを使用している間は、注意を払わなければならない。
組織は、使用するため又は製品及びサービスに組み込むために提供された顧客又は外部
提供者の所有物の識別、検証及び保護・防護を実施しなければならない。
顧客若しくは外部提供者の所有物を紛失若しくは損傷した場合、又はその他これらが使用
に適さないと判明した場合には、組織は、その旨を顧客又は外部提供者に報告し、発生した
事柄について文書化した情報を保持しなければならない。
―――――――――――――――――――――――――――
規格要求事項自体は、分かりやすい内容かと思います。
組織は、顧客または外部提供者の所有物を預かっている間、使用している間、それら
材料や設備などに対して、識別(どこの誰の所有物か)、検証(預かっている所有物
は、紛失してないか、または損傷していないか)、及び損傷しないように専用容器に
入れたり、カバーを掛けて保護することをこの要求事項では求めています。
更に、顧客または外部提供者の所有物を紛失や損傷、又は不適合状態した場合は、その
旨を顧客または外部提供者に報告し、協議し、解決することとなります。
また、所有物には、知的財産や個人情報も含まれます。
これらの情報資産は今や組織の重大なリスクになります。
知的財産や個人情報などのリスク管理策についても、組織の責任で構築し、顧客や
外部提供者に示すことができれば、更なる信用向上につながるでしょう。
これらのようなやり取りは、顧客や外部提供者との信頼関係の成就に繋がります。
食品安全の視点だけではなく、所有物管理・情報管理という側面も利用した、組織の
顧客及びパートナー(外部提供者)からの信頼関係向上にISO9001を利用してみてはいかがでしょうか。