主任コンサルタント 柏原 吉晴
本コラムでは、ISO 22000又はFSSC 22000(食品安全マネジメントシステム)の規格解説を中心に、ISO 9001品質マネジメントシステムとの違いや特徴、及びフードチェーン関連組織のISO 9001の活用方法なども解説します。
前回は「7.3.3.1 原料,材料及び製品に接触する材料」のa)~h)、及び「7.3.3.2最終製品の特性」のa)~g)を解説しましたが、今回は、「7.3.3.1 h)」、「7.3.3.2 f)」、及び「7.3.4 意図した用途」について、一部掘り下げて解説します。
7.3.3.1 h)意図した用途に適した、購入した資材及び材料の食品安全関連の合否判定基準又は仕様については、購買基準となり、原料を使う側としては当然必要な情報と
なりますが、一般的なISO/FSSC 22000の審査では、食品衛生法の食品や容器包装の規格基準に対して、適合している旨の検査成績書があれば良いとされています。
果たしてそうでしょうか?
規格は、「意図した用途に適した・・」となっています。本来は、組織の使用条件、及び顧客・消費者の使用条件を考慮した検査をしなければなりません。溶出試験データなどは、試験方法・条件が定まっていますので、必ずしも「意図した用途に適した」方法で検査はしていません。
7.3.3.2 f)食品安全にかかわる表示については、アレルゲン情報や使用上の注意として、消費者に注意を喚起する情報となり、当然必要となりますが、これは「7.3.4 意図した用途」にも関連します。要求事項は以下の通りです。
『最終製品の,意図した用途,当然予測される最終製品の取扱い,並びに意図しないが当然予測されるいかなる誤った取扱い及び誤使用を考慮し,かつ,ハザード分析を実施するために必要となる範囲で文書の中に記述すること。
製品別に,利用者グループ及び,該当する場合は,消費者グループを明確にすること,また,特定の食品安全ハザードに特に無防備と判明している消費者グループを考慮すること。』
製品に対して、組織が意図する食べ方、調理方法等をパッケージ等で伝達するわけですが、同時に、顧客・消費者の誤った取扱いや誤使用も考慮した伝達が必要になります。誤った取扱いや誤使用に対する注意喚起表示やコミュニケーション(5.6.1 b参照)がとても重要となります。ISO 9001で言えば、「7.2.3顧客とのコミュニケーション a)製品情報」に該当します。
特定の顧客又は消費者層に対して、誤った取扱いや誤使用がもたらす結果の重大性が大きい、又は無防備と考えられる場合は、特にコミュニケーションが重要となります。
FSSC 22000の構成要求事項であるISO 22002-1の「17.製品情報及び消費者の認識」に、以下の要求事項があります。
『情報は、消費者に対して、彼らがその重要性を理解し、及び選択に資することができるような仕方で提供されなければならない。
情報は、表示、又は他の手段、例えば、会社のウェブサイト及び広告で提供してもよい、及び製品に適用できる保管、調製及び提供の仕方を含んでもよい』
方法は様々あるので、組織に適したコミュニケーション手段で、情報提供しましょう。
最後に、日本人の大好きな「マグロ」について情報提供します。
この情報が、どれだけ日本人、特に妊娠の可能性のある女性に対して、その重要性を理解し、及び選択に資することができるような情報提供がされているでしょうか?
平成22年6月1日改訂、厚生労働省
「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項
キンメダイ、メカジキ、クロマグロ、メバチマグロなどは、1回約80gとして、週1回までの摂取(約80g/週)。」
寿司・刺身一切れ約15g(一人前約80g)、切り身は一切れ約80gとなるので、妊婦及び妊娠の可能性のある方は、マグロに関しては週1回までが摂取の目安となっています。
他にも、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、メカジキ、サワラ、マグロステーキは、摂取を避けるべき。
EU(健康・消費者保護総局)は、メカジキ、マグロは、週に多くて1食(100g未満)まで。
ニューヨーク市に至っては、マグロステーキや寿司は、「Don’t Eat」とアナウンスしています。
水銀の毒性は、日本においては既に水俣病で知られていることですが、症状として、知覚異常、難聴、構語障害が知られ、体内致死量は、100mg。
日本では、水銀の摂取は魚介類から80%以上で、特に胎児には水銀毒性の影響が大きいことがわかっています。
魚介類の健康に対する有益性を十分に認識した上で、このような負の側面もしっかり認識して、豊かな食生活を送りたいものです。