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コンサルタント コラム

主任コンサルタント 柏原 吉晴

<ISO22000:2018年版解説(8)>
テーマ:経営に貢献するISO22000:2018

TBCSグループの食品会社向け専門コンサルティング組織である株式会社フィールズコンサルティングの柏原吉晴が担当します。

さて今回は、6.1「リスク及び機会への取組み」を解説します。

6.1は、2018年版の新規の要求事項になります。
毎年、組織を取り巻くリスクと機会を決定し、市場の変化を捉えて、組織の持続的発展の道筋(計画)を作ります。
要求事項は次の通りです。

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6.1 リスク及び機会への取組み

6.1.1 FSMSの計画を策定するとき、組織は、4.1に規定する課題及び4.2並びに4.3に規定する要求事項を考慮し、次の事項のために取り組む必要があるリスク及び機会を決定しなければならない;

a) FSMSが、その意図した結果を達成できるという確信を与える;
b) 望ましい影響を強化する;
c) 望ましくない影響を防止又は低減する;
d) 継続的改善を達成する。

注記 この規格において、リスク及び機会という概念は、FSMSのパフォーマンス及び有効性に関する事象及び、その結果に限定される。公衆衛生上のリスクに取り組む責任をもつのは規制当局である。組織は食品安全ハザードのマネジメントを要求されており、このプロセスに関する要求事項は箇条8に規定されている。

6.1.2 組織は、次の事項を計画しなければならない:
a) 上記によって決定したリスク及び機会への取組み;
b) 次の事項を行う方法:
 1) その取組みのFSMSプロセスへの統合及び実施;
 2) その取組みの有効性の評価。

6.1.3 組織がリスク及び機会に取り組むためにとる処置は、次のものと見合ったものでなければならない:
a) 食品安全要求事項への影響;
b) 顧客への食品及びサービスの適合性;
c) フードチェーン内の利害関係者の要求事項。

注記1 リスク及び機会に取り組む処置には、リスクを回避すること、ある機会を追求するためにリスクを取ること、リスク源を除去すること、起こりやすさ若しくは結果を変えること、リスクを共有すること、又は情報に基づいた意思決定によってリスクの存在を容認することが含まれ得る。
注記2 機会は、新たな慣行(製品又はプロセスの修正)の採用、新たな技術の使用、及び組織又はその顧客の食品安全ニーズに取り組むためのその他の望ましくかつ実行可能な可能性につながり得る。
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以下のことを実施します。
①組織内外の課題、利害関係者の要求事項を考慮し、リスク及び機会を決定する。
②決定したリスク及び機会の、取組み計画を策定する。
③その計画をFSMSに統合し、実施する。

対処すべきリスクと機会の考慮事例として、
①日本経済の景気、自社マーケットの動向、人材不足、為替変動
②世界、特にアジア圏の景気、人口増加
③原材料価格の上昇、輸送費の上昇
④アレルゲンコンタミ、表示ミスなどの法令違反リスク
⑤施設、インフラ、生産設備の老朽化、更新費用の増大
⑥気候変動に伴う洪水、台風、豪雪、高温、乾燥、津波
⑦情報漏えい、不正アクセスによるシステム障害、情報の損失
⑧停電、地震、火災、原子力発電所事故、戦争、テロ、破壊行為、感染症
⑨従業員の悪ふざけ映像の流出、風評被害
⑩不良率、歩留まり、クレーム件数、廃棄量
などが挙げられ、
これらの課題や要求から、優先的に取り組むべきリスクと機会が決まります。
上記項目すべてがリスクのように感じますが、リスクの裏には機会があります。
これらは表裏一体であり、リスクは機会にし、逆に機会がリスクにならないよう取り組む必要があります。

次に、決定したリスクと機会に対する取り組みを計画します。
主担当となる部署も決めます。この時、取り組みの方向性・選択肢としては、
①リスクを回避して、やらない。
②リスク源を除去し、リスクの発生を抑える。
③リスクの起こり易さ(発生の可能性)と結果(重大性)を何らかの方法で変化(低減)させる。
④リスクを他社や委託先と共有し、分散する。
⑤リスクが発生しても耐え得る場合、経営判断でリスクを容認する。
⑥機会はビジネスチャンスなので、積極的に取り組み、活かす。例えば、
新採用、新商品開発・販売、販路開拓、新規顧客獲得、パートナーシップ構築、
新技術開発などです。

HACCPのハザード分析という仕組みと同じように、
組織の事業プロセスに潜む様々なリスクと機会を分析・評価し、ベストプラクティスを選択することが経営には求められます。
食品安全管理は当然のこととして、そもそも組織が元気でなければ事業は続きません。
ここでは、事業プロセスのプロセスアプローチを求めています。
経営資源やガバナンスにも関連する高いレベルのリスクアセスメントをすることで、継続的な組織の発展が望めるでしょう。

柏原 吉晴(かしわばら よしはる)

Yoshiharu Kashiwabara

TBCSグループ、株式会社フィールズコンサルティング 取締役
(ISO / FSSC / 経営支援のコンサルティング実績 300社以上)
東京農工大学大学院、ビジネス・ブレークスルー大学大学院修了(農学修士、MBA)
QMS及びFSMS審査員研修修了

大学院修了後、ホテル・旅館向けの経営及び衛生コンサルティングを行う組織で、 全国40社以上のホテル・旅館の人件費削減、HACCP厨房設計、システム運営指導、ISO認証支援を行い、また、全国50社以上の食品衛生指導、浴場衛生指導を定期的に行ってきた。
2008年からは、株式会社TBCソリューションズで、QMS、EMS、及びFSMSなどの認証取得や運営のコンサルティング、内部監査員養成研修講師、及び経営コンサルティングを担当した。
2018年10月からは、TBCソリューションズから分社化し、食品専門のコンサルティングファームとして、株式会社フィールズコンサルティングを設立、取締役に就任し、 FSMSを中心に、食品会社向けの総合的なコンサルティングを提供している。また、全国各地での講演や、執筆活動も行っている。

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